U・LUCI のできるまで

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U・LUCI (うるし)が発表展示会中に開催された

ギャラリートークの記録です。

 

本日のスピーカー、まずお一人目、田中さんです。すべては木地から始まります。木地がなければ、何もできない。

当たり前のようですが、木地が悪ければ、全てに響く。木地は命です。

今回の展覧会の作品はほとんど全ての木地を田中さんにお願いしています。

 

田中 木地はね…お客さんが「欲しい」というものを持ってないといけないわけです。

 

その「お客さん」というのは木地を発注する方たち…作家だったり、職人、お店などの、木地を注文する方たちですね。

 

田中 そうです。それで、それが難しい。持っていないとぼくも生活が立ち行かなくなるし、

持ちすぎていても、お母ちゃんに怒られるし(笑)。やっかいなんです。

でも、長くやっているとその辺の決断がうまく行くようになる。

というのは、全部「見込み」で製材するんです、丸太から。木場に行ったり、

岐阜に行ったりしてしたら、自分の好きな材料が手に入るかというと、はいんないんですよ。

それで、丸太を買って自分で、もう、好きなように製材するんです。

材料はいい材料もあるし、悪い材料もある。意外に面白いんです、どういう材料と出会えるか、が。

この素材から、どんな材をとるかっていうのは、面白いし、そこがきちっとできないと、

お客さんの注文に応えられなくなっちゃう。材料さえあれば、こっちのもの!(笑)。

だから、自然にいい材料はどんどん、売れる。でも材料がなきゃ、話にならない。

 

丸太を買うんですか?

 

田中 そう、丸太を買ったほうが安いんですよ。あと、その方が自分の好きなように、

好きな材がとれるじゃないですか、一本の丸太から。色んな材料があって、

小さい丸太もあるし、大きい丸太もあるし。値段も高かったり、安かったり色々だし。

でも絶対「乾燥してすぐ使えますよ」という材料よりも圧倒的に安いです。

でもそのかわり、乾かすのに時間がかかったり、場所が必要だったり、思わぬ事もある。

シミがあったり、クサレがあったり。やっかいなんですけれども、でも…乾いた材料買っても、

つまらない。やっぱり自分で製材所で、ひっくり返して、こういう厚みにしてくれって…

そういうことをやらないと、ね。4t車に一杯の材料を製材するのに、5、6時間で製材できる。

それを一日か二日かけて、角材を板と板の間に入れて、風通しをよくして乾かすんです。

天然で乾かして・・・だいたい、冬場に製材して、次の年の秋とか冬に使うくらい、そういうペースです。

 

家具ほどには、材料は乾燥させなくてよいの?

 

田中 ま、器の場合は粗挽きしますから、たいてい。だから多少甘くても、粗挽きした時点でまた、

風を通すことによって、大丈夫になる。でも、お客さんが急いでたりすると、生の状態でも

粗挽きしてやる場合があります。色々です。

 

木地のお話をしながらいつも思うことなんですが、ひとつだけ伺いたいことを。

例えば、このボウル、この木地を塊から刳って作るんですが、そうすると残るのはこの木地だけ。

もとは塊だったのに、あとは全部屑、ゴミになってしまう。

だから、これはある意味ではとても贅沢だなあ、と思うけれど、どうなんでしょう。

 

田中 MDFっていう、チップを固めたものはあるんですが、やっぱり、木の風合いが変わってきてしまう。

木とは異質のものだし、やっぱり天然ものの方が勝ってる。

贅沢っていえば、贅沢だけど、まあ、そういう「文化」なんだろうね。

 

そう。木というのは生きていますから、漆を塗っても、伸びたり、縮んだり、動きます。

ところが、プラスチックなら、動かないし、丈夫だし、安くていいですよって、比べて

言いますけど。でも、熱い味噌汁入れたら、熱くて持てない。

一方、漆の器はお汁の温かさがほんのり、手に来るくらい。まあ、そういう自然の素材の

「優しさ」のようなことは、やっぱり木で、漆でないと、できない事なのかなあ、と思います。

そして、今日のお二人目のスピーカーをご紹介します。今回の作品は「鎌倉彫を考える会」と

いう会で、様々に議論を交わし、討議を重ねて2年ほどの時間をかけて作りました。

その仲間たちはみなさん、鎌倉彫に携わっている匠の方々なのですが、なかでも今回、

極めて沢山のお仕事をしてくださったのが飯笹さんです。

では、飯笹信和さん、木地を受け取って、その後のお話をお願いします。

 

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飯笹 漆の種類の中に、生漆(きうるし)という木から採れたままの、精製してない漆があります。

木地を受け取ると、それをまず木地に塗ります。それが「木固め」っていう最初の工程です。

それを一晩、室(むろ)という漆を乾かす設備の中に入れて、だいだい8時間から10時間かけて

乾かすんですが、今度は「研ぎ」という工程に入ります。漆の場合は塗ったら、研ぐ。

研ぐという仕事はとても時間のかかる仕事ですが、まずは木固めしてから、研ぎます。

そこから今度は、下地の仕事に入ります。一応、感覚を頼りに、下地をつけていくんですが、

触ってみて、いい木地だと、もう、一回でも大丈夫かな?っていうこともあるんですが、

まあ、だいたいは二回。木地屋さんの前でこういう話をするのも、何なんですが(笑)。

木地には轆轤の跡が出るんです、うねりというか…。やっぱり仕上がりの時にはそれが

なるべく出ないようにするので、ものによっては3回くらいつけるものもあります。

それから、研ぎを経て、裏をやって表をやって、下地が終ったら、今度は「中塗り」という、

漆を「くろめる」といって、水分を飛ばしたりして、漆を精製したものに、鉄分を加えると

漆は黒く反応するんです。その黒くなったものを塗ります。それが中塗りで、それも1、2回

塗りまして、また研ぎの作業があって。今度は、上塗りになるんですが、上塗りは様々な色の

仕上がりがあります。仕上げ方によって、顔料を入れたり、あるいはそのまま塗ったり、

本当に色々な塗り方があるんですが、今回は錫という金属を多用しました。

漆を塗った上に、粉末にした錫を蒔き付けて。意外に漆と金属というのは相性がいい、

と思っています。輪島なんかだと、漆を塗った上に金や銀の蒔絵を施しますし。

古くは、東京国立博物館に所蔵されている硯箱には、鉛の板を貼ったりしているものもあります。

 

研ぎは何でなさるんですか?

 

飯笹 今回はこの黒漆は、例えば輪島塗りなどで、重箱の中のツヤっと光るような仕上げですけど、

炭で研ぎます。呂色ともいいまして、「呂色仕上げ」とも言います。

 

この艶消しな感じの仕上げは?

 

飯笹 乾口(ひくち)、といいまして、マコモを使います。マコモという植物の粉を蒔き付けると…

鎌倉彫ではよく使うんですが、赤にマコモを蒔くと、おなじみの鎌倉彫の小豆色のような赤になります。

黒の場合はちょっと、艶消しっぽく仕上がります。

 

 (その2)に続く...